耕さない

耕さない

自然農の畑で一番大事にされるのは「耕さない」ということです。
「不耕起(ふこうき)」と言ったりします。

「耕す」というのは努力のイメージもあり、良いことのように思えますが、
自然農では、まず耕しません。
耕さなくても良い、または耕さない方がいい、と言えます。


そもそも耕すのはなぜ?

では、なぜ一般的には耕すのか?というと、これも幾つか理由があります。
  • 耕すことで作業がしやすくなります。
  • 耕すことで土が柔らかくなり、野菜が根を伸ばしやすくなります。
  • 耕すことで土に空気が入り、有機物の分解が進みます。
もっと色々と耕すメリットがあるのですが、
ここでは上記3つに絞りました。

作業がしやすくなること、野菜が根を伸ばしやすくなること、というのは
なんとなくイメージがしやすいですね。
それでは「有機物の分解が進む」というのはどういうことでしょうか。

土の中にはたくさんの生き物が住んでいます。
見える生き物から見えない生き物まで、たくさん住んでいます。
生き物は生きるために食べています。
何を食べているか、というと枯れた植物や死んだ虫などを食べています。
「食べる」ということは、その食べ物を体の中で消化して生きるためのエネルギーを取り出すことです。
消化されたものは細かくなります。つまり、分解されます。
枯れた植物などの「有機物」がいろいろなたくさんの生き物に食べられて、分解されます。
そして、とても絶妙なことに、
今度はその分解されたものが植物の養分になります。
これでグルッとめぐりました。

この土の中にいる生き物はたくさんいるのですが、
土の浅いところでは呼吸をする生き物がいます。
空気がたくさんあると元気になります。
私達にも新鮮な空気と食べ物が必要なように、
土の中の生き物も同じです。

つまり、耕すことで土に空気がたくさん入ると、この生き物たちが元気になり
有機物をどんどん分解します。それで、植物の養分がたくさんできることになります。
植物の養分がたくさんできるので、その畑で野菜を育てると、よく育ちます。
これが耕すことの大きな効果です。

耕すことで有機物がいっきに分解されて、植物(野菜)が吸収すると、
次は有機物がたりなくなります。
有機物がたりないので、「肥料」を入れたくなります。
肥料を入れたら分解を促すために耕します。そして、また肥料を入れます。

でも耕さない

それでは耕さない場合はどうなるか、というと
生き物はゆっくりと、自分たちのペースで呼吸して食事をします。
そこで育つ植物も、自分たちのペースで成長します。
それで上手に、絶妙にバランスがとれているようです。

こうやって見てみると
「もっとおおきく、もっとたくさん」というところに耕す心があるようです。

その場所の、その畑のペースに合わせて、野菜を育てることができたら、
耕す必要がなくなります。
逆に、耕さないことで、その畑のペースに自分を合わせていきます。
耕さないことが自然に添うことにつながっていきます。

これはフク木農園の畑の土の断面です。
ゴボウを掘っている時の断面です。
上の黒っぽい層が腐植の部分です。
死んだ植物などを小さな生き物が食べている世界です。
その下の灰色の層が粘土の部分です。
フク木農園は棚田を利用させてもらっているので、
田んぼの粘土が出てきます。
ここは固く冷たく、生き物も少ないように見えます。

ゴボウを育てると、収穫の時に写真のように土を掘り起こすので、
結果的に土を耕すことになります。
せっかく小さな生き物たちが生活している黒っぽい層を壊してしまうので、
なんとも言えない気分になります。

でも、ゴボウが美味しいんですよね。

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